税理士の仕事がAIに奪われるという話について思うこと
2023年5月30日現在、ChatGPTに関する法整備が議論されるなど、AIというものがより身近な存在となってきているように感じています。
私自身は、AIをしっかり使いこなしているというわけでもなく、入り口をウロウロしているような段階です。
ただ、税理士の仕事がAIに奪われる、という話を見聞きするにつけ、税理士として独立開業している身としては、避けては通れないということは意識せざるを得ません。
今のところは、AIになんて仕事が奪われるわけがない!とか、AIに仕事を奪われたらどうしよう、と言えるほど、AIに精通しているわけではないので、ある意味フラットな状態とも言えます。
そんな中途半端な立ち位置だからこそ、言えることもあるのではないか。
税理士に係る業務について、自分の思うところを書いてみます。
税務相談
ChatGPTでは、質問を投げ掛けると、瞬時に回答が返ってくるというのが一つの特徴のようです。
AIによって、あらゆる質問のパターンとその回答を学習することで、ある程度の受け応えが成立することになります。
国税庁でも、税に関する相談について「チャットボット(ふたば)」というサービスがあります。
国税庁ホームページ
チャットボット(ふたば)に質問する
こうしたサービスの精度などについて、あーだこーだと今の時点で言うつもりはありません。
すごいと思うところもあれば、もっとこうだったらと思うこともあるでしょう。
これが、今私自身が税理士として実施している税務相談に取って代わっていくものなのか。
今の精度であれば、難しいところがあったとして、これがどんどん精度が上がって、使い勝手が良くなっていけばどうなのか。
税金の仕組みがシンプルなものであっても、そこに付随する法律や制度を全て把握しておくというのは現実的に難しいところがあります。
必要最低限の知識を持って、状況に応じて検索したり、調べることで、あらゆる分野に対応していくことになります。
そういう意味では、法律や制度を全て網羅して、その中から回答を作るAIというのは、税務相談に向いているのかもしれません。
質問に対する答えを、根拠を持って素早く出せるというのは理想的なところです。
ただ、税務相談をするのは人間なので、そこに合わせた対応というのは必要になるかなと。
もしも、私自身が税務に関する法律や制度を全て網羅していたとして、税務相談が滞りなく実施出来るのか。
おそらく上手くいかないケースは出て来るでしょう。
そもそも相談者の方が、明確な質問をきちんと言語化した状態で持って来られるというケースは稀です。
そうした場合には、お話を聞きながら、税務に関する言葉に置き換えて、該当する法律や制度に照らし合わせていくという工程が必要となります。
だから、AIではダメということではありません。
全ての納税者の方に税務に関する法律や制度を深く浸透させるというのは現実的ではないでしょう。
ただ、税務に関する法律や制度がなくなることはありません。
こうした法律や制度の仲介者という役割は、いつまでも必要なものとして、残っていくものではないかと思っています。
税務申告書作成
税理士の仕事として、税務申告書を代理で作成するというものがあります。
一般の納税者にとっては、税務申告書を作成するということ自体が難しい場合もあり、事業の内容などを踏まえて、税務申告書に反映させていくというのは、一定の需要があります。
こうした税務申告書の作成については、一定のルールがあって、税理士であっても、そうしたルールに従って作成しています。
基本的には、絶対にこの税理士にしか作成できない、というものではないはずです。
ただ、税制については、その時の情勢や経済状況などによって、期間限定の制度が適用されることも多く、こうしたことの積み重ねによって、税金の計算自体が複雑化しているという現状もあります。
それでも、一定のルールに従っているという事実は変わらないので、そうした複雑に絡み合った税制に対応する仕組みが出来れば、AIで自動的に税務申告書を作成することは可能なのだと思っています。
そうすると、税理士としての仕事が一つなくなるのではという懸念が出て来ます。
私自身としても、結構な時間を掛けて、税務申告書を作成して、それに対する報酬をいただいているので、それがなくなるのであれば、影響が大きいものがあります。
そうした技術が確立されるのであれば、いよいよ税理士としての仕事を見つめ直す必要が出て来るでしょう。
ただ、税務申告書の作成というのは、あくまで結果の集計であり、ある意味機械的な部分があります。
一番時間を掛けている、あるいは掛かっているのは、そこに至るまでの過程の部分。
今期の利益見込みがこれぐらいなら、税金がこれぐらいになる。
でも、この制度を使えば、税金がこれぐらい減ります。
そのためには、いつまでにこれをしておかなければいけない。
集計するための結果を作り上げるというのも大事な仕事になります。
もしかしたら、AIにもそうしたことは出来るようになるかもしれません。
それでも、そうした根本的なところはなかなか変わらないかなと。
仕訳入力
税理士としての仕事と言えるのかは分かりませんが、仕訳入力するという記帳代行サービスを請け負っているケースは結構多いものです。
通帳コピーを見ながら、会計ソフトに入力する。
2023年5月30日現在、クラウド会計などが浸透してきている中では、そうした作業というのは少しづつ変わってきているのかもしれません。
ただ、以前として残っている作業であり、通帳コピーに100行の記帳があれば、日付・科目・金額・摘要などの情報を一つ一つ会計ソフトに入力していくことになります。
数が増えれば増えるほど、入力する回数が増えるので、作業時間も比例的に増えていきます。
これが、預金口座と会計ソフトが連動して、日付・金額・摘要の情報が自動で入力されて、科目などについても、AI機能で学習させて、ある程度は自動的に割り付けられるとなれば、今まで入力作業自体に掛かっていた時間は、その分減ることになるでしょう。
今まで2時間掛かっていた入力作業が、会計ソフトにデータを入力するだけなら、10分で終わるようになった。
もしも掛かった時間も加味して報酬をもらっていたならば、報酬は減ることになります。
ある意味では、AIに仕事を奪われているということになるでしょう。
色んな考え方はありますが、ただ機械的にデータを入力するだけの作業を好んで実施している税理士というのはそんなに多くないのかなと思っています。
仕訳入力は税務会計の根幹の部分なので、そこを疎かにはしない。
けれど、データを転記する作業は出来るだけ効率的にしたい。
どちらかというと、データ転記後の科目や処理の検討・チェックに時間を掛けたい。
役割分担という考え方をすれば、AIの得意分野はAIに任せるというのは、自然の流れなのかもしれません。
任せた仕事の代わりに、今度は指示を出す方に回って、枠組みを考えたり、方向性を示すということが出来れば、上手く調和できるのかなと思っています。
おわりに
仕事を奪われる、というと確かにあまりいい気はしません。
自分なりの意図をしっかり持って、奪ってもらうのであれば、それもまた一つの共存の方法なのでしょう。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
この記事を書いている人
エフティエフ税理士事務所
代表 税理士
藤園 真樹(ふじぞの まさき)
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