向いている方向は同じでもズレは生じてくる

どこで働くかを決める時には、働く側の意思だけでは決められず、採用する側の思惑も入ってくるものです。

そうした意思や思惑を調整する機会としては、採用面接などが挙げられます。

そこで、お互いの向いている方向を見定める。

その時には向いている方向は同じだと思っていても、段々とズレが生じてくることもあります。

最初に採用された時には

大学卒業後の進路を考えた時に、大学院など学問の世界にこのまま残るという選択肢はありませんでした。

好きとか嫌いとかいうことではなく、自分がその道に進むことが想像が出来ない。

結果として、就職活動するしか選択肢が残されていないという状況でした。

そんなフワフワした気持ちで、就職活動を何となく始めてしまったので、当初から箸にも棒にも掛からず。

就職氷河期の真っ只中だったということを差引いても、散々な結果でした。

大学3年生の春先から始まった就職活動は、順調な人であれば、数か月で終わるところ、梅雨明けする頃になっても、まだ決まらず。

周りの状況を聞いて焦りを覚えつつ、街中で見掛けるリクルートスーツや募集企業の採用ページが目に見えて減っていることを目の当たりにして、タイムリミットが迫っていることを実感していました。

そんな時に、見掛けた採用ページがその後入社することになった会社のものでした。

その頃には、どういう会社で、どういう条件で、どのような仕事をしたいか、というよりも、とにかく会社に採用されて働きたいという思いが先行するようになっていました。

もちろん、どこでもいいから、というわけではありません。

元々こだわりや明確に希望する条件などはなかったため、それが就職活動する中で浮き彫りになったというところでしょうか。

会社としては、専門職というよりも、総合職として色んな分野で経験を積んでいける人材を採用したいという思惑があり、私としてもこういう仕事がしたいというようなこだわりや希望がなかったので、お互いが向いている方向は同じだったのでしょう。

その後、人事異動などを経て、税務会計の仕事に興味を持つようになり、税理士業界へ転職することを決意するのですが、その時には会社の思惑とのズレが生じるようになっていました。

専門職となる仕事をずっと続けていきたい。

採用時には向いている方向は同じものだったのですが、段々とズレが生じるようになっていました。

転職で採用された時には

こうした経緯もあって、税理士業界へ転職するための活動を始めることにしました。

私のイメージでは、税理士といえば、中小事業者を対象に税務サービスなどを提供する、というもの。

そのため、税理士資格の取得から始めるということもあって、スタッフが何百人といる大手の事務所ではなく、個人の事務所を中心に探していました。

基本的には、10人未満の事務所が圧倒的に多かったのですが、縁があってもう少し規模が大きな事務所で採用いただくことになりました。

特徴的だったのは、個人の裁量の部分が比較的大きくて、極端に言えば、小さな個人事務所が集まっているようなところがある、というところでしょうか。

多くの事務所が、税理士である所長先生が顧問先を全て担当して、数人のパートのスタッフが事務所内での事務作業を担当しているという状況の中で、それぞれスタッフが直接顧問先の担当になっているというのが、とても新鮮だったことを覚えています。

もちろん、採用面接のときには、ここまでは分からず、入社後に気付いたことばかりですが。

ただ、その片鱗は面接のときから感じてはいました。

面接して下さった所長と副所長がネクタイをしていない。

以前の会社であれば、仕事でネクタイを締めずに外部の人に会っているという光景を見たことがありませんでした。

強制されているとか、注意されるから、というようなことではなく、それが当たり前という感覚でしょうか。

そうした自由さであったり、柔軟さというのは、私自身が求めていた方向と合致するものであり、お互いの思惑の方向性は同じものだっとのだと思います。

そこから、事務所としての規模が拡大していき、組織化していくことが必須となる中で、お互いに向いている方向にズレが生じるようになりました。

結果的には、独立開業することになりましたが、今でもお互いに向いている方向はそんなに違わないのかなと思う時もあります。

独立開業した後の採用について考える

独立開業してからは、誰かに採用されるという機会は今のところありません。

もちろん何があるか分かりませんので、選択肢としてなくなったというわけではありませんが。

代わりに、誰かを採用するという立場になりました。

今のところ、大々的に人を採用して、仕事をどんどん分担していくというところまでは至っていません。

もしも、そういう時が来たらどうするか。

これまでの自分自身の採用されてきた経験を踏まえると、向いている方向が同じでもズレは生じてくることは避けられない。

それは仕方がないものとして、どこまで譲歩していくか。

開業当初からリモートワークについて試行錯誤してきました。

まずは自分自身で事務所以外でも仕事が出来るようにしたい。

そこから、自分以外の働いてくれる人もリモートワークを活用した働き方が出来ないかを考えるようになりました。

2020年から始まったコロナ禍という状況で、リモートワークのためのツールが整備され、普及してきたということもあり、より導入し易い環境になってきました。

しかしながら、2023年5月になってコロナ禍という状況が新たな段階に入ってきて、世の中の風潮としては、リモートワークの必要性に対する認識が薄まってきているように感じます。

そうした中で、今はリモートワークをしたいと言ってくれていても、世の中の状況に合わせてリモートワークが選択肢の一つにしかならないこともあるでしょう。

それが悪いわけではありませんが、こちらの方向性とはズレてくることになります。

人を採用する時には、その時に向いている方向が同じかだけではなく、その方向がどういう時に変わっていくのかを見定めることが必要なのかもしれません。

おわりに

大胆に進め過ぎると、後で後悔してしまうこともあります。しかしながら、慎重になり過ぎると、なかなか話が進まないことも。

どちらにしろ、考える時間は必要なので、そうした時間を省かないようにはしたいものです。


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この記事を書いている人

エフティエフ税理士事務所
代表 税理士
藤園 真樹(ふじぞの まさき)

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