共同経営で概算経費を適用する場合
税務会計においては、色々な優遇措置や簡便処理の特例があります。
それらを組み合わせることで、出来るだけ税負担を抑えることが可能な場合もあります。
しかしながら、それぞれの制度において制約や縛りがあるので、よくよく検討した上で実行することが必要となります。
今回は、個人の共同経営における医業・歯科医業の概算経費の適用について、取り上げてみます。
なお、これらの情報は、2021年12月20日現在の状況となりますので、最新情報は、リンク先の情報等も合わせてご確認されますようご留意ください。
共同経営の概要
個人事業における共同経営の形態については、いくつかのパターンが考えられます。
共同経営の形態の概要については、別の記事でも取り上げています。
共同経営の場合の組織形態の考え方
その中でも、今回は任意組合の場合の共同経営の形態を前提として話を進めていきます。
詳細については、上記の記事で書いていますが、任意組合の場合の共同経営については、ざっくり言えば、任意組合という組織単位で課税されることなく、それらを構成する個人に直接課税されるというパス・スルー課税となります。
例えば、こういったイメージです。
概算経費の概要
医業・歯科医業の所得金額の計算においては、社会保険診療報酬の所得計算の特例を適用した方が有利な場合があります。いわゆる措置法26条の概算経費と言われるものです。
概算経費については、別の記事でも取り上げています。
医業・歯科医業における概算経費の考え方
詳細については、上記の記事で書いていますが、ざっくり言えば、医療収入に掛かる経費の金額を医療収入の金額から一定の計算式に基づいて算出した金額とすることが出来る、というものです。
例えば、こういったイメージです。
単純に考えれば、実際の経費の金額よりも、概算経費として計算した金額の方が多くなれば、措置法差額として、実際の経費の金額に上積みすることが出来るということになります。
上記の図で言えば、オレンジ色の「措置法差額5,900,000円」というところです。
この金額を加味して所得金額の計算が出来るため、所得(利益)が減って、税金が少なくなるということになります。
共同経営で概算経費を適用する場合
それでは、任意組合という形態で共同経営をしていて、概算経費を適用する場合について考えてみます。
概算経費の適用については、下記のように規定されています。
租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)
※一部抜粋
青色申告者であることや収入の要件がありますが、「医業又は歯科医業を営む個人」とあり、診療所等を開設している管理者などの要件は特に記載がありません。
そのため、任意組合による共同経営の場合には、任意組合の構成員である個人ごとに、概算経費の適用が出来るかの判定を行うこととなります。
考えておくべきこと
例えば、1人で医業・歯科医業の診療所の社会保険診療報酬が年間5千万円を超えている場合には、概算経費を適用することが出来ません。
これが、医業・歯科医業の診療所を運営している任意組合を医師・歯科医師2人で共同経営している場合であれば、その分配割合によって、個々の社会保険診療報酬が5千万円以下であれば、概算経費を適用することが出来ます。
もしも概算経費を適用した方が実際の経費の金額よりも多くなるのであれば、任意組合による共同経営という形態とした方がメリットがあると考えられるかもしれません。
しかしながら、それぞれの制度の制約等を加味しながら、今後の方向性を含めて考えておく必要があります。
概算経費の適用については、特に事前の届出制ではないため、その事業年度が終わってからでも、実際の経費の金額と概算経費の金額を比較して、有利な方を選択することが出来ます。
一方で、任意組合については、組合契約となるので、事前に分配割合を含めた条件を決めておく必要があります。
毎年条件をコロコロと変えたり、今年は組合契約ありで、翌年はなし、というのは余程の事情がないと難しいところでしょう。
個人事業の共同経営の場合には、単純に利益の分配だけでなく、資産等の配分も考えていく必要があります。
また、任意組合の名前で、口座を開設したり、取引することが出来ないので、どちらかの名前を使ったり、どちらかの口座や資金から支払いをすることになります。
そうした精算など税務会計以外のところでも定期的にやりとりをする必要があるでしょう。
こうした条件をクリアしつつ、任意組合による共同経営で概算経費を適用するメリットを享受し続けることが出来る、という見込みは最低限確認しておきたいところです。
おわりに
目の前のメリットだけでなく、長い目で見て、どこでメリットを取るようにするかというのは、難しいところではあります。
未来を確定して考えることは出来ないため、どこまでデメリットを享受できるかというのを決めておくのもひとつの方法かもしれません。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
この記事を書いている人
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代表 税理士
藤園 真樹(ふじぞの まさき)
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