年明け早々に確定申告書を提出するために最低限必要なこと

個人で事業をしている場合、基本的には、毎年所得税の確定申告書を行う必要があります。

1~12月を一つの期間として、土日祝日が重なれば多少前後することはありますが、翌年2月16日~3月15日が申告期間という認識であるのが一般的でしょう。

ただ申告の受付自体は、2月16日以前でも可能です。

私自身も、他の税理士の方で自分の確定申告を年明け早々に提出しているということを見聞きして、年明け早々に提出するようにしました。

年明けすぐではなく、1月中旬頃ではありますが。

所得税の確定申告をご自身でしたことがある方は分かるかもしれませんが、普通にしていても、年明け早々に確定申告書を提出することは出来ません。

ある程度の工夫が必要となりますが、私自身の経験も含めて、最低限必要だと思うことを挙げてみました。

月次決算の実施

個人事業の場合、1~12月の1年間の損益状況を数値で把握する必要があります。

月次決算の内容等については、別の記事でも取り上げていますので、そちらもご参照ください。

 月次資料を準備するときの目安~来年の確定申告に向けて月次損益からはじめる~

 月次決算は枠組み作り

当たり前の話ではありますが、1年間の取引を一気に処理しようとすると時間が掛かります。

もちろん、小分けに処理していたとしても、トータルで掛かる時間は同じぐらいかもしれません。

それでも、長時間処理をしていると集中力が切れてしまったり、昨年のことを思い出しながらの処理となると、余計に時間がかかってしまうものです。

それを毎月とまではいかなくても、一定期間ごとに処理をしておけば、年明けから掛かる時間を短縮することが出来ます。

ただ、それでも年明け早々に確定申告書を提出するには間に合わないので、日々の処理をしておくことが理想です。

 売上の記録を毎日記録して、帳簿に反映させておく。

 経費の領収書などを毎日記録して、帳簿に反映させておく。

 ・・・

そんな時間はない、と思われるかもしれませんが、まとめて処理する場合でも同じぐらいの時間を掛ける必要があるので、結果的に掛ける時間は変わらないでしょう。

まとめて処理することで、効率が落ちて更に時間が掛かるかもしれません。

極端に言えば、1日10分の処理を365日すると、約60時間。

60時間の処理を年明けにまとめてしようと思うと、寝ずに飲まず食わずでも2.5日。

1日6時間づつ処理しても、10日掛かります。

その時間を、年明け早々に確保出来るかどうか。

ある程度は年内に処理が完了していることが必須となります。

決算整理の前倒し

月次決算を実施ているとして、どこまでの精度で行うかというのも重要になります。

現金・預金の動きを記録して、売上・経費等を把握する。

月次決算をしていれば、最低限ここまでは実施しているでしょう。

入金・出金がないものの把握はどうしているか。

11月に発生した売上の請求書を12月に発行して、年明け以降に入金がある場合。

期中は入金ベースで売上に計上して、発生と入金のタイミングが年を跨ぐ場合だけ売掛金として計上するのでも、確定申告書の作成自体には問題ありません。

ただ、売上が発生した時点で売上に計上していないと、年明けからその把握に時間を掛けることになります。

そうすると、確認に時間が掛かったり、計上漏れとなることもあり得ます。

そのため、発生ベースでの売上把握というのが必須となります。

また、支払についても同様です。

クレジットカード決済をしている場合には、その支払いが後になります。

クレジットカード決済した経費の計上のタイミングについては、別の記事で取り上げていますので、そちらをご参照ください。

 クレジットカード決済した経費の計上のタイミング

20日締で翌月10日引落のクレジットカードの場合。

12月23日にクレジットカード決済・納品された経費は、1月20日締で2月10日に引落となります。

1月20日締を待って、クレジットカード明細を取得してから経費処理していたのでは、年明け早々には間に合いません。

12月23日に未払として経費処理しておく必要があります。

領収書などが手元にあれば、その情報を元に処理しておくことが出来ます。

最近では、会計ソフトの機能として、クレジットカード決済の情報を直接取り込むことが出来るものも多いので、そちらの機能を利用してみるのも一つの方法です。

ただ、加盟店側の処理のタイミングで、クレジットカード決済の情報がリアルタイムに反映されない場合もあるので、注意が必要です。

高速道路のETC利用料であれば、そのデータがクレジットカード会社に上がってくるまで、2~3週間かかることもあります。

他にもタイムラグがある場合もあるので、そうした傾向はある程度掴んでおきたいところです。

固定資産がある場合には、一般的には、減価償却費を決算整理として確定申告時に計上している場合もあります。

これもまた月次決算の際に、前倒しで処理しておくと、年明けの処理を減らすことが出来ます。

減価償却費の月処理については、別の記事でも取り上げていますので、そちらをご参照ください。

 減価償却費を月割り計上するために

その他、年明けの処理で時間が掛かっていることを前倒しに出来ないかを検討しておくことが必要となります。

確定申告書等作成コーナーの利用

ここまでは、確定申告書の内容について工夫することがないかという視点でしたが、年明け早々に提出するのに、システム的な要件というのも関係してきます。

個人で事業をしていて所得税の確定申告書を作成する場合、会計ソフト等のシステムを利用して作成していることが多いでしょう。

確定申告書作成のための入力補助的な機能もあり、効率的に進めることが出来るので上手く活用出来れば便利ではあります。

ただ、市販の会計ソフト等の場合、最新年度の確定申告に対応するためには、タイムラグが出る場合がほとんどです。

例えば、マネーフォワードのクラウド確定申告の場合。

必要事項の入力などは進められますが、年明け早々には確定申告書の様式には完全に対応していないため、提出するところまでは進めません。

 

他社もまた同じような状況になっています。

これはシステム会社のせいというよりは、国税庁からリリースされる確定申告のシステムの公開が年明けになるため、仕方がない部分があるのかなと思っています。

1月下旬にシステムが対応するとなると、年明け早々に確定申告書の作成が出来ていたとしても、提出することが出来ません。

そのため、年明け早々に提出するためには、今のところ国税庁のシステムを利用するしかありません。

 国税庁ホームページ
 令和4年分の確定申告書等作成コーナーを公開しました

 

確定申告書等作成コーナーの利用については、別の記事でもいくつか取り上げていますので、そちらもご参照ください。

 ふるさと納税した時の確定申告を「確定申告作成コーナー」で作成する

 住宅ローン控除1年目の確定申告を「確定申告作成コーナー」で作成する

 医療費控除の確定申告を「確定申告作成コーナー」で作成する

 

会計ソフトの使い勝手にもよりますが、確定申告書等作成コーナーの使い勝手も良くなってきているように感じていますので、検討する価値はあるかなと思っています。

おわりに

早く提出すればいいというものではないという考え方もありますが、確定申告書はあくまで過去のことなので、出来るだけ早くまとめて、これからのことを考える方が有用なのかなと思っています。


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この記事を書いている人

エフティエフ税理士事務所
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藤園 真樹(ふじぞの まさき)

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